競合に負けない住宅営業の競合対策

限られた来場数でより確実に契約をいただくことが求められる今、「競合対策」は避けて通れません。とはいえ競合を否定したり、値引きで対抗したりすると、信頼を落として逆効果になりがちです。大切なのは、比較される前提に立ったうえで、お客様の判断軸を整え、自社が選ばれるように戦略的にお客様と接することです。

これは毎回アドリブ的に行うよりも、型にすることで個人としても会社としても再現性が上がります。そこで本稿では、競合が使うフレーミングを理解し、フレーミング返しとアンチフレーミングで商談を設計する方法を整理することを通じて、競合負けを防ぎつつお客様に価値を感じてもらう商談を実現するヒントをお伝えします。

目次

競合をどう理解しているかで、対策の質は決まる

競合対策の議論が空回りする最大の理由は、競合理解の解像度が低いまま、想像で話を進めてしまうことにあります。競合が「何を強みとし、何を不安にしているか」「お客様にどのように説明しているか」は、調べ方の深さで見える景色が変わります。まずは自社や各営業職がどのレベルで競合を見ているかを確認してください。

あなたはどのレベルで競合を調べているか(インターネット・資料請求・直接営業)

成功事例共有会:2022年6月定例会『営業ができる競合対策~基礎編~』より

競合調査には三段階あります。ネット、資料請求、そして営業担当から直接説明を受ける段階です。相手との距離が縮めば縮むほど手間は増えますが、得られる情報の質は一気に上がります。まずは自社がどこまでやっているかを確認してください。

ネット止まりだと「言い方」や「比較の誘導」が見えません。またサイトでは基本良い事しか発信しませんし、情報自体が古かったり、雰囲気などを感じることもできません。一方で資料請求では資料の情報はもちろん、返信文や郵送物の同梱物などからも会社の姿勢がどこまで対応に落とし込まれているのかまでも感じることが可能です。

もちろん最も有効な調査は実際に営業を受けることです。一般的な内容の確認だけでなく、表に出ていない内容だけでなく、話の進め方や接客姿勢、使っているツールや違和感なども把握できます。

競合の営業を受けて初めて見えるフレーミングトーク

競合の営業を受けると、資料では分からない順序や布石の打ち方が見えます。何を最初に結論として置き、どの不安を先に潰し、どこで背中を押すのか。進め方や言葉の選び方からも、相手の力量やフレーミングのポイントが見えてきます。

さらに、質問されたときの返し方も重要です。こちらの不安にどこまで寄り添い共感し、安心させながら解決策をどのように提案するのか?も見えてきます。基本的にはここまでやって初めて競合調査と呼べる内容になってきます。

もちろん商談の様子や相手のツールなどは、録音やメモで残し(可能なら写真データを撮り)、社内で共有することが基本になります。

競合対策の前提を間違えていないか

競合を深く理解しても、前提がズレていると対策は無駄になります。競合対策は「競合に勝つ」というよりは、顧客が納得して選べる判断軸を整え、自社が選ばれる優位な位置を勝ち取るための取り組みです。

競合・顧客・自社の三つを同時に見て、重なり合う部分で優位を作る。この考え方に立つだけで、値引きや他社批判に逃げる必要がなくなります。

成功事例共有会:2022年6月定例会『営業ができる競合対策~基礎編~』より

競合対策は「競合」だけを見ても成立しない(競合・顧客・自社の観点)

競合対策というと、競合の価格や仕様を調べて比較表を作るイメージになりがちです。しかし実際に結果が確定するのは、競合の優劣というよりもお客様の優先順位が固まった瞬間です。比較は最後の確認であって、最初の意思決定ではありません。

そのためには「競合」「顧客」「自社」を同時に見る必要があります。顧客側の家族構成、将来設計、失敗したくない点が分からなければ、どんな差別化も刺さりません。自社側も、得意領域と避けたい領域を明確にして初めて、自社のお客様像が明確になり効果的な営業活動が実現します。三つの円が重なる場所を探すのが競合対策で、比較表はその後に使う道具です。

競合を排除するのではなく、ポジションを取るという発想

競合を排除する発想は、商談では機能しません。お客様は「両社の話を聞いたうえで選びたい」と考えているからです。他社批判は不信を残すだけなので避けましょう。

それよりも有効なことは、自社が選ばれやすい評価軸を先に提示し、その軸で比較できる状態をつくることです。よく言われる「判断の物差し」のことです。つまり競合の土俵に乗って戦うのではなく、自社が勝てる土俵(枠組み)で戦うようにする。これこそが「ポジションを取る」ということです。

競合もフレーミングトークをしているという事実

お客様は論理だけでなく、印象やイメージでも意思決定します。競合各社は、強みを強みに見せるための「フレーミング」を必ず持っています。ここを理解せずに自社の説明だけ磨いても、比較の場で土俵が噛み合わず見劣りします。まずは競合がどんな言葉と材料で判断軸を作っているかを把握し、こちらの説明設計に反映させましょう。

競合はどんな強みを、どう強みとして語っているか

強みは、内容よりも「語り方」によって強みと認識されがちです。たとえば同じ耐震等級でも、「家族を守る」「資産を守る」「将来売れる」と、顧客が大切にしている価値観と結びつけることができると、その重みは大きく変わります。お客様は自分の物語に合う言葉に反応します。

また競合の説明を聞くときは、最初に提示される結論と、そこに至るまでの根拠の出し方を観察してください。数字を先に出すのか、体験談を先に出すのか。専門用語を使うのか、生活の言葉に翻訳するのか。この観点で競合を観察すると、自然と有効な対策が見えてきます。

表現・言葉・ツールでつくられる「お客様のイメージ」

フレーミングは言葉だけで想起されるわけではありません。比較表、図解、写真、実例集、見学の導線、サンプルなど、目に見えるツールや実物と一体となってイメージを固定していきます。

お客様は情報量の多さよりも、理解しやすさと分かりやすさから自分なりに納得することで安心します。例えば「性能が高い」と言うだけでは弱いですが、室温の変化を図で見せたり、光熱費の推移を例で示すと、生活の実感に落としやすくなります。

競合がどのツールで納得を作っているかが分かれば、自社の対策として用意すべき材料も見えてきます。説明の上手さより理解のしやすさを設計しましょう。そのためにもまずは競合のフレームを把握することが求められます。

競合対策の実務① フレーミングとフレーミング返し

競合のフレーミングを理解したら、次は自社側の設計です。狙いは競合の強みを否定することではなく、自社が勝てる土俵を見つけることです。自社にとって勝ち筋のある判断軸を全面に出し、競合の軸を相対化して、比較の土俵を自社が有利な土俵に持ってきます。そのうえで伝える順序や材料をセットで整えると、効果は倍増します。

自社の強みを「会社選びの最重要ポイント」にする(自社フレーミング)

自社フレーミングは、自社の強みを「会社選びで一番大切な譲れないポイント」として位置づける作業です。単に強みを列挙するのではなく、お客様の不安や願いに結びつけて、優先順位の最上位に自社の強みを持ってくるようにします。ここが曖昧だと、競合の分かりやすい言葉に言いくるめられてしまい、競合負けする原因になります。

例えば設計力が強みなら、間取りの自由度ではなく「暮らしのストレスが減る」「将来の変化に耐える」など生活に直結する形で語ることも有効です。施工品質が強みなら、現場管理の仕組みや検査体制を示し、安心を具体化しても良いでしょう。最重要ポイントにするには、根拠と見せ方と伝え方までセットで整えるようにすることが必要であり、ここまでが土台となる部分です。

競合の強みを「そこまで重要ではない軸」にずらす(フレーミング返し)

成功事例共有会:2022年6月定例会『営業ができる競合対策~基礎編~』より

フレーミング返しは、競合の強みを否定せず、重要度を調整する技術です。競合が推す価値が暮らしにとって本当に必須なのか?ということを、事実と前提整理で一緒に確認することで、結果として優先順位を下げてしまう方法です。

例えば性能の一点押しなら、立地や暮らし方で最適解は変わる、仕様で調整ができる、結局は現場の大工さん次第、など様々な要因を示しながら、優先順位を下げていきます。

競合から弱みを指摘される前に打つ「予防注射」

予防注射とは、競合から突かれやすい論点を先に出し、評価の枠をこちらで整えておくことです。弱みがゼロの会社はありません。問題は扱い方です。後出しで指摘されると不安が増幅しますが、先に対策と同時に開示しておくことで「誠実な会社で信頼できる」と感じてもらえたり、お客様側も「知っていて選ぶ」状態になります。

例えば価格が高めなら、理由(仕様・品質管理・保証・体制)を先に示し、どこにコストを掛けているかを透明化します。工期や制約があるなら、なぜそうなるのかと代替策まで提示する。先に対策と併せて話しておけば、競合が指摘指摘もひっくり返されることはありません。

事実ベースで伝える重要性(※誇張しない)

アンチフレーミングで最も大切なのは、事実に基づくことです。競合の強みを不安材料に変えるときも、誇張や煽りは禁物です。言葉の強さで不安をあおることはしてはいけません。あくまで可能性の話に留め、あたかもお客様自らが判断したかのように錯覚してもらうようにします。

根拠は一次情報に寄せます。契約書の条項、保証内容、施工標準、見積の前提条件など、確認できる材料で説明できるように可能な限り準備しましょう。また判断は急がせず、「不安があるなら一緒に確認しましょう」と伴走姿勢を示すことで、競合比較の場面でも味方になってくれるお客様が増えていきます。

競合対策のゴールは「勝つこと」ではない

競合対策を「勝ち負け」にしてしまうと、強い言葉を使い、相手をさげすむようなトークになり、価格の勝負になりやすくなります。それではお客様の楽しい家づくりは実現できません。ゴールは、お客様が納得して選び、契約後も後悔しない状態を作ることです。そのためにも

  • 自社の強みの優先順位を最上位に持ってくる
  • 競合が推す領域の優先順位を下位にずらす

この二つのことを意識的に行っていきましょう。

互いに強みとしている領域で、より優位に立つ

自社と競合が同じ領域を強みとして語るなら、差は「確からしさ」で決まります。根拠と再現性を見せられる会社ほど、お客様は「任せても大丈夫」と感じやすいです。言い換えると、単に「できます!」と意気込みを語るより、「毎回同じ品質でできる」ことの根拠を客観的なデータやビジュアルで見せることです。

例えば性能で勝負するなら、計算や仕様だけでなく、施工品質の担保(現場管理・検査・気密測定など)をセットで示します。デザインなら、提案プロセスや設計のレビュー体制まで整備していることをビジュアルとして見せることも有効です。重なる領域こそ、裏側の仕組みまで語れる会社が優位に立ちます。

競合が強みにしている領域の優先順位を下げる

競合が強く押してくる価値は、お客様の頭の中で重要度が上がりやすいものです。そこで否定に走るのではなく、「それは大切だが、順番としてはここが先」という整理を手伝います。優先順位を変えるのは操作ではなく、整理の支援です。

具体的には、家族の将来設計や土地条件、資金計画の枠を先に固め、その枠の中で仕様を選ぶ流れに戻します。すると競合の一点突破の強みが、全体の一項目として収まり、冷静な比較検討に戻すことができます。その結果として、総合的に信頼できる自社が選ばれる状態が生まれます。

まとめ

競合対策は、競合の情報を集めて言い返すことではありません。競合・顧客・自社の重なりを見極め、判断軸と説明の順序を設計し、その根拠をビジュアルとして見せるように整える取り組みです。フレーミングとアンチフレーミングは、その設計を現場で再現するための道具にすぎません。

また自分の営業力アップとお客様の満足度向上のためにも、まずは競合調査に出かけ、改善点を順番に潰していきましょう。その繰り返しこそが最大の競合対策であり、自社の強みを磨く行為であり、あなたの営業力と契約棟数アップを実現してくれるはずです。

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