コラム
若手の新人住宅営業の育て方-令和時代版

住宅営業の世界は、ここ数年で劇的に変わりました。コロナ禍をきっかけに、お客様の情報収集手段や購買行動が一変し、営業現場の常識も大きく揺らいでいます。同時に働き手の意識も特に若手世代で大きく変化しています。

そんななかで、新人営業パーソンの育成に苦労している工務店も多いのではないでしょうか?

この記事では、「なぜ今の若手がなかなか育たないのか?」「昔のやり方が通用しない理由は?」という疑問に向き合いながら、令和の時代に合った若手営業パーソンの育て方を具体的に解説していきます。

昔のやり方が通用しない時代に突入した

この章では、住宅営業の現場に起きている時代の変化を整理し、なぜ従来の育成法では成果が出にくくなったのかを明らかにします。

情報格差が消えた!顧客は“予習済み”でやってくる

今のお客様は、家づくりを考え始めた時点で、SNSやYouTubeを使って豊富な情報を集めています。間取り、断熱、住宅ローン、土地選びなど、かつては営業パーソンから話をされて初めて知る内容も、事前に知識を得て来場されるケースが一般的になっています。

この結果、知識差を活かした説明スタイルではもはや信頼を得ることは難しくなりました。むしろ「適切なタイミングで、適切な話をしてくれるか?」「ネット上では分からない、自分たちのケースに合う提案をしてくれるか?」「ストレスのない接客をしてくれるか?」などが問われるようになっています。

接客のチャンスが激減し、営業は“選ばれる側”に

コロナ前は、数多くの住宅展示場や工務店を巡るのが一般的で、6~7社と訪問していたお客様も大勢いました。しかし今は、事前にWebで情報を絞り込み、2〜3社にしか実際に会わないという流れが当たり前になっています。つまり、1回の接客が持つ意味が格段に重くなっているのです。

その1回で信頼を勝ち取れなければ、次のステップには進めません。逆に言えば、限られた接点で最大限の価値を感じてもらうことが必要です。そのためには、訪問前から「この人に会ってみたい」と思わせる情報発信も欠かせず、営業のスタート地点自体が変化していることを理解する必要があります。

ポータルサイト・SNS・動画が営業の“第一印象”に

今やお客様が最初に接するのは、住宅会社のホームページやSNS、施工事例の動画です。営業担当者のブログやInstagram、会社紹介のYouTubeなどをチェックして、「この会社は信頼できそうだ」と判断してから問い合わせをする流れが定着しつつあります。

つまり、対面接客より前に「印象形成」が始まっているということです。この第一印象で信頼感を抱かれなければ、来場や問い合わせにすらつながらないケースもあります。営業は“会ってから勝負”ではなく、“会う前に信頼される準備”が欠かせない職種へと進化しています。

今の営業に求められる「信頼力」と「読解力」

この章では、今の営業現場で成果を上げるために必要とされる能力や姿勢の変化について具体的に解説します。

説明より“安心感”を与えられる専門性が求められる

商品やプランの説明はもちろん重要ですが、それだけではお客様の心をつかむことはできません。特に資金、土地、建物の性能など、不安を感じやすいポイントについては、専門的な知識をベースに分かりやすく伝えることが求められています。

「この人はプロとして任せられる」と思ってもらうには、広く浅い知識や一方的な説明では足りません。顧客の状況に合わせて、わかりやすく、的確な情報提供と問題解決ができる力が求められます。

つまり、日々の情報アップデートはもちろん、実践的なトークスキルやプレゼンテーション力の向上も不可欠です。

話すより“聞く力”が信頼をつくる営業の要

顧客が何を求め、どこに不安を抱えているのかを把握するには、「聞く力」が不可欠です。とにかく話して売り込む営業は、今や時代遅れ。お客様は「この人は自分のことをわかってくれている」と感じたときに、はじめて心を開いてくれます。

そのためには、表面的な情報だけでなく、「なぜそう考えるのか」「どんな暮らしを理想にしているのか」といった背景まで深掘りしていく対話力が求められます。質問の仕方ひとつで信頼関係は大きく変わるのです。

セールスプロセスの主役は「クロージング」ではない

ひと昔前の営業では、「最後にどうクロージングするか」が成否を分けるとされていました。しかし今は、その前段階である「信頼構築」と「ニーズの把握」が成約のカギを握ります。初回接客で信頼を得られなければ、どれだけ良い提案や説明をしても聞いてもらえません。

つまり、営業の流れ自体が大きく変わっているのです。従来の「クロージング重視」の営業ではなく、「信頼獲得からのニーズの把握を重視」する営業スタイルが求められています。

若手が育たない原因は“世代のズレ”にある

この章では、なぜ今の若手が思うように成長しないのか、その背景にある価値観の違いと、教える側の対応力について見ていきます。

現場主義では通じない時代になった

かつての住宅営業育成は、「現場に同行して学べ」「先輩のやり方を見て盗め」といったスタイルが主流でした。しかし現在は、接客機会そのものが減少しており、若手が“見て学ぶ”環境がそもそも整っていません。

また、精神論的な指導や曖昧なアドバイスでは、若手が納得しにくいのが実情です。失敗しても理由が分からなければ、行動も改善されません。指導する側は「俺を見て学べ」ではなく、時間と労力をかけて「教えてあげる」ことをより意識する必要があります。

世代ごとの“学び方の違い”を知ろう

30代前半の“ゆとり世代前半”は、体系立てた指導を求め、「とりあえずやってみろ」というスタイルに抵抗感を示す傾向があります。さらに20代の“ゆとり世代後半”やZ世代になると、「動画で自分のペースで学びたい」「失敗しない方法を最初に知りたい」というニーズが強まります。

もちろん一人ひとりの特性に合わせて教え方も変わりますが、まずは大まかに世代ごとの特徴を押さえることでよりスムーズに教育することが可能になります。

つまり、世代ごとに学び方への期待が異なるにもかかわらず、教える側が自分の経験則だけで育成を進めると、すれ違いが生じます。まずは「相手がどう学びたいのか」を理解することが、育成の第一歩になります。

若手が動けないのは“分からないから”ではない

Z世代の多くは、未知の状況に不安を感じやすく、「正解が分からないと動けない」という傾向があります。しかしこれは、怠慢ではなく、合理性を重視する価値観の現れです。曖昧な指示や感覚的な説明では納得できず、自信を持って行動できません。

だからこそ、育成の際には「手順」や「判断基準」を明確に伝えることが求められます。成功例だけでなく失敗の理由や改善策も共有し、理解→納得→行動の順序を意識することで、若手の行動力は格段に向上します。

若手育成を成功させる仕組みと工夫

この章では、若手営業を着実に育てるために、どのような仕組みを整えるべきか、実例とともに紹介します。

“いつでも学べる”環境を用意することが重要

動画教材やクラウドマニュアルは、忙しい現場でも自律的に学べる環境づくりに有効です。必要なときやスキマ時間に見られる形式なら、学習のハードルも下がります。しかも、教える側の手間も軽減でき、属人化を防ぐ仕組みとしても機能します。

1回きりの研修よりも、繰り返しアクセスできる教材が今の若手には合っています。「学びたいときにすぐ見られる」「自分のペースで繰り返し学べる」環境こそが、成長のベースになります。

ロールプレイングは「フィードバックの質」がカギ

ただ演習をするだけでは成長にはつながりません。重要なのはフィードバックの「具体性」と「肯定」です。「もっと頑張れ」ではなく、「この質問の仕方は良かった」「こう言い換えるともっと伝わるよ」といった前向きな助言が、次の実践を後押しします。

良い行動を言語化してあげることが、自己成長を促す第一歩です。評価のタイミングと伝え方次第で、若手のモチベーションは大きく変わります。

育成の障壁は“時間・コスト・ノウハウ”の不足

教育の重要性は理解していても、実際には「作る時間がない」「教材の設計ができない」「どこから始めればよいのか分からない」といった悩みがつきまといます。その結果、結局は昔ながらの「現場で先輩の営業を見て覚えろ」型の教えになりがちです。

しかし属人的な仕組みは「仕組み」とは言いません。教える側/教わる側の相性次第、つまり宝くじのような偶然性に欠けているようなものです。計画的に育成のPDCAを回すには、誰が教えてる側でも一定の成果が期待できる体制を整えることが求められます。

育成の一歩は「自社に合う仕組み」を見つけることから

ここでは、内製と外部活用のメリット・デメリットを整理し、自社に合った方法を見つけるヒントを提示します。

社内で育成教材を作成する

社内スタッフが主導して教材(動画やマニュアルなど)を作成する場合、コストを抑えつつ、自社の文化や商品に合わせた内容にできます。スマホでの撮影やPowerPointによる解説スライドなど、小さなステップからでも十分スタート可能です。

ただし、ノウハウや時間的な余裕がないと継続が難しくなる点には注意が必要です。小さく始めて、徐々に仕組みを洗練させていくことがポイントです。

外部コンテンツや研修を活用する

住宅営業に特化した動画教材やセミナーを活用すれば、すぐに一定レベルの育成を開始できます。専門家による体系化された内容は、質の担保にもなります。しかし一番の問題もココに潜んでいます。

というのも住宅営業に特化した、成果を出すための効果的なコンテンツが体系的にまとまっていて、最新情報が更新され続けていく教材やセミナーはなかなか存在しないからです。また毎回講師を招いて研修することは、コスト的にも難しい物があります。

試行錯誤しながら、自社の型を育てていく

育成には「これが正解」という万能な方法は存在しません。大切なのは、やってみて、修正して、再構築するという姿勢です。最初はうまくいかなくても、「自社に合ったやり方」を模索する中で、自然と仕組みができあがっていきます。

失敗を恐れず、小さな成功体験を積み重ねていくことこそが、育成の持続可能性を高めるカギになります。

まとめ|「変化に合わせた育成」が営業力を強くする

住宅業界の営業は、大きな転換期を迎えています。これまでの常識が通じない今、必要なのは「時代と人に合わせて教える力」です。新人営業を育てるには、単なる根性論ではなく、仕組み・環境・理解のアップデートが欠かせません。

変化に適応し、育成に向き合える企業こそ、これからの住宅業界で選ばれる存在となるでしょう。

補足

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